水環境における温室効果ガスの動態解析

顔写真

氏名
増田 周平/ MASUDA Shuhei
E-mail
masuda@akita-nct.ac.jp
職名
准教授
学位
博士(工学)
所属学会・協会
International Water Association, 土木学会,日本水環境学会,日本下水道協会
キーワード
下水道,下水道資源の農業活用,カーボンニュートラル(下水道,水稲栽培),メタン,亜酸化窒素,水環境の富栄養化,モデル解析
技術相談
提供可能技術
・下水処理場におけるカーボンニュートラルに関して
・下水道資源を活用した水稲栽培に関して

研究内容

1.下水処理場におけるカーボンニュートラルに関する取り組み

 下水処理プロセスにおいて発生するメタンおよび亜酸化窒素は,強力な温室効果ガスであり,その排出量の把握と削減策の実施が急務とされている。以上をふまえ,下水処理プロセスで発生するメタンおよび亜酸化窒素の発生量の実測と,削減手法の開発を目的とした研究開発に取り組んでいる。

 これまでに,宮城県や秋田県の下水処理場を対象に,温室効果ガスの発生量調査を行った。また,発生量を測定するのみならず,実処理場において発生量の削減を可能にする運転手法を開発した。また,得られた知見を中心として,国内の主要学会(公益社団法人水環境学会)の学会誌において解説記事を寄稿した。さらに,IPCCにおける排水処理由来の温室効果ガス算定方法のガイドラインの改訂(2019 Refinement to the 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories, Volume5 (Waste), Chapter6 (Wastewater Treatment and Discharge),)においてContributing Authorとして参画した。

 温室効果ガスを測定する装置として,特に現場における温室効果ガスの測定に供する装置を保有しており,排ガスの温室効果ガス(メタン・亜酸化窒素)測定装置(堀場製作所),水中の溶存態亜酸化窒素測定装置(Unisense.co),および無機態窒素測定装置(WTW.co)などを保有している。これらの機器を中心とした温室効果ガスの評価に関する研究をこれまでに15年以上取り組んでおり,測定のための様々なノウハウを蓄積している。

 

2.下水道資源の農業利用に関する研究

 下水処理場は熱,バイオマス,栄養塩,そして水資源が集約する施設である。近年は,従来の排水処理システムの中核としての役割に加え,エネルギーと資源の供給拠点としての役割に期待が高まっている。中でも下水を処理した後に生じる下水処理水は,安定的な水資源であり,窒素・リン・カリウムなどの栄養塩を含むものの,これらの農業利用は積極的に行われていない。一方で秋田県は,日本有数の米どころ・酒どころである。そこで地域の主要産業に着目し,下水処理水を用いた酒造好適米栽培への着想を得た。以上をふまえ,本研究では,化学肥料を用いずに下水処理水中の栄養塩のみで酒造好適米を栽培する手法の確立を目的として技術開発を行っている。

 取り組みは平成29年に開始し,3年間の基礎試験の結果,玄米や土壌に有害な物質の蓄積は見られず,安全性に問題がないことを確認した。令和2年からは実証田へと規模を拡大し,安全性,品質,および環境負荷(温室効果ガスの発生量)の観点から研究評価を行った。また,研究成果の社会実装を並行して進め,出羽鶴酒造(株)との協働により,下水再生水のみで栽培した酒造好適米を用いた特別純米大吟醸酒「酔思源(すいしげん)」を令和5年4月にリリースした。

 本研究は社会実装型の教育研究であり,秋田市,出羽鶴酒造(株),を中心とした様々な事業体との連携の上で進められている。本取り組みは,SDGsを切り口に教育と研究を両輪で回し,高等教育として成立させることで,ESD(持続可能な開発のための教育)の実践を進める点に大きな特色がある。今後は本プロジェクトを継続するとともに,品質の向上および技術の水平展開に向けた取り組みを進める予定である。

提供可能な設備・機器

名称・型番(メーカー)
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