【これまでの研究課題例】
(1)強磁性金属を舞台とする電荷・スピン・熱などの輸送現象を量子論で記述し,その発現機構や微視的支配因子を明らかにすること: 下図 (a) は,電荷を持たないマグノンが伝導電子を媒介とすることで外部電場による加速を受ける微視的機構を表すファインマン・ダイアグラムである.この計算から我々は,伝導電子の輸送特性とマグノン流との間の基本的な関係式を得ることに成功した[1].
(2)永久磁石の生命線である保磁力の温度特性を明らかにすること: 下図 (b) は保磁力の支配因子の1つである結晶磁気異方性定数 (MAC) を量子論的に記述して実験値(ネオジム磁石)と重ねたものである.実線と破線は我々の計算結果であり,従来の現象論を拡張すると共に,その微視的起源を与えることに成功した[2].
(3) 実用強磁性金属における帯磁率や結晶磁気異方性の温度特性を統一的立場から記述すること: 室温より十分大きなキュリー点を有する遍歴磁性体にも適用可能で,且つ(形式論でなく)実際に計算可能な電子論の構築を行った.適用例として非常に単純化された模型※を用いて帯磁率の温度依存性[3]やMACの温度依存性[4]を全温度領域に渡って数値計算し,キュリー=ワイス則やMACの冪則といった経験則が電子論的に再現できることを示した.
※単一バンド強結合模型に半古典s-d相互作用とラシュバ型スピン軌道相互作用を加えたもの.
【文献】
[1] D. Miura and A. Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 113602 (2012)
[2] D. Miura and A. Sakuma, AIP Advances 8, 075114 (2018); J.Phys. Soc. Jpn. 88, 044804 (2019)
[3] D. Miura and A. Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 113601 (2021)
[4] D. Miura and A. Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 91, 023706 (2022)
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