PAM方式を適用した極数切換誘導電動機の特性算定法に関する研究
PAM方式極数切換誘導電動機は,1:2以外の速度比で極数を切換えることができる特徴がある。一方,起磁力高調波の影響が大きく,高調波非同期トルクを発生しやすい問題がある。
本研究では,一般的な整数スロット巻誘導電動機にPAM方式を適用した場合の極数切換誘導電動機のインダクタンス行列を,対象座標軸上に展開し,対象座標軸上における電圧方程式から,空間高調波を考慮した等価回路を導出している。空間高調波を考慮した等価回路定数は,実験により直接求めることができないため,PAM方式適用前の,一般的な誘導電動機の試験により,一般的な等価回路定数を求め,一般的な等価回路定数から変換することによってPAM方式を適用した場合の誘導電動機の等価回路定数を導出する方法を明らかにしている。
整数スロットを基本としたPAM方式極数切換誘導電動機の特性算定例は以下のようになる。
1) 3の倍数次を含まない極数への切換の場合
8極整数スロット巻誘導電動機をPAM方式によって10極へ切換える場合
2) 3の倍数次を含む極数の切換の場合
8極整数スロット巻誘導電動機をPAM方式によって6極へ切換える場合
6極整数スロット巻誘導電動機をPAM方式によって8極へ切換える場合
整数スロット巻誘導電動機をベースにPAM方式を適用した場合,切換える前後において電動機のバランスが良くないこと,少ないコイル数で多極機を実現したいことなどから,分数スロット巻誘導電動機に対してPAM方式を適用し,多極機へ切換える場合について,設計法,及び特性算定法について研究を行っている。多極機の固定子が実現できると,例えば多極同期電動機の固定子としても転用でき,小型でコンパクトな低速電動機を実現できる可能性もある。
分数スロット巻誘導電動機をPAM方式によって極数を切換える場合について設計例と起磁力高調波について検討を行った例が,8極から14極へ切換える場合についてであるが,その結果,14極の成分が非常に優勢になるように設計することができている。また,分数スロット巻8極の誘導電動機をベースにPAM方式を適用して10極,14極,16極,20極へ切換える場合のコイルの設計法についても明らかにしている。
特性算定法については,分数スロット巻8極の誘導電動機を10極,14極,16極,20極へ切換える場合について空間高調波を考慮した等価回路を導出している。それぞれの極数について対応するために,巻線係数の一種であるConnection factorを導入することによって,各極数への対応ができるように工夫している。また,等価回路定数は,整数スロット巻誘導電動機をPAM方式によって切換える場合と同様に,8極時の等価回路定数を,切換えた後の高調波を考慮した等価回路の諸定数に変換する方法を提案している。
現在,分数スロット巻8極の誘導電動機を14極へ切換えた場合の実機による特性測定結果と,提案する特性算定法によるシミュレーション結果を比較検討し,本手法に対する検討を行っている。
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