高性能化を実現するモータ駆動システムの制御手法に関する検討
インバータとモータにより構成されるモータ駆動システムは、今日の電力化社会における動力として不可欠ですが、社会実装のためには導入コストを下げる必要があり、システムの小型・低コスト化が求められています。加えて、ロボットなどモータを要素として持つ装置は、モータ単体の性能が全体の性能を左右します。そのため本研究では、モノをそのままに性能を改善するため「制御」を軸としています。モータを負荷としてインバータに接続することで得られる特徴に着目し、機電一体のシステムとして制御を施すことでモータ駆動システムの高性能化を目指します。
〇低歪み・高効率なモータドライブ向けインバータ制御
電力消費の半分以上を占めるモータは,工場のベルトコンベアや電車など幅広い場所で使用されている.そのためモータ駆動システム全体の電力損失も問題視されている.損失として,インバータのスイッチング動作による損失やモータ巻線による銅損・鉄損が挙げられるが,モータに関わる後者は材料の改良など導入コストがかかる一方,スイッチング損失はインバータ制御により容易に改善可能である.本研究では,モータが誘導性負荷であるため高周波スイッチングしても電流品質は殆どかわらない特徴を利用し,そのようなスイッチングを排除するようにインバータを制御することで電流品質を保ちながらスイッチング損失を低減する手法を検討する.本手法は変調器として機能し,またモータパラメータを必要としないことから,あらゆるモータ・制御系に適用可能である.
(参考文献:電気学会英文論文誌D,vol. 11,no. 3,pp. 494-505 など)
〇電磁ノイズを抑制する車載空調向けモータドライブシステム
近年,電気自動車やハイブリッド車の普及により車載空調用コンプレッサの電動化が進んでいる.一方,車には多くの電装品が存在するため,インバータのスイッチング動作により発生する電磁ノイズの抑制が必須である.一般に電磁ノイズ抑制用のフィルタが挿入されるが,サイズ・コストが増大する.コンプレッサの電動化はエンジンに直結され駆動する機械式を置き換える形で進んでいるため,このサイズ・コストの増大が問題となる.このような背景から,インバータのスイッチング動作を工夫することで電磁ノイズの発生を抑制する手法が盛んに検討されている.しかしながら,制約としてモータの運転領域が狭まる問題があり,空調機能が低下する欠点がある.そこで本研究では,従来考慮されていなかった電磁ノイズ抑制手法の非線形変調領域および過変調領域を積極的に利用する手法を検討する.電圧波形が歪むため高精度なトルク制御はできないが,この歪みをモータの電流制御器に帰還させることで抑圧することで車載空調に必要な運転領域を十分確保できる.故に空調機能を保ちつつ追加素子・回路なしに電磁ノイズの低減に貢献する.
(参考文献:電気学会英文論文誌D,Advance online publication(2023/10/11現在) など)
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