秋田高専の”人ネットワーク”と地域イノベーションを皆様の力で実現を!
1.はじめに
秋田高専では、“ひとづくり・しごとづくり”を重視した、新しい産学連携のしくみづくりを開始しました。県外の人材や技術という資産を県内に導入するためのネットワークづくりです。従来の地域連携に加え、秋田高専OBがこれまで培ってきたキャリアや専門技術を、秋田の教育と産業に還元させます。これにより地域に不足している人材、技術の供給拠点として、秋田高専は雇用創出によるイノベーション創生の観点で地域のみなさんのお役に立ちたいと思います。
これのために、秋田高専は、産学協力会会員企業をはじめとした県内企業、秋田県庁、公設試のほか、あきた企業活性化センター、秋田県ふるさと定住機構との連携により、ご協力・ご支援をいただいて、地域の人的ネットワーク(“人ネットワーク”)形成を推進しております。ネットワーク形成には、地域共同テクノセンターに新たに“教育コーディネーター”を配置して、産学官民のみなさんのニーズとシーズをつないでいきます。
本事業は、「教育コーディネーターによる人ネットワーク形成-高専卒業生を活用した地域産業の活性化-」なる名称で、国立高等専門学校機構「企業技術者等活用プログラム(平成25年度)」からの予算措置によりスタートしました。(本事業のリーフレット(26年度版、25年度版)をご参照ください。)本事業はまた、ICT(インターネットコミュニケーション技術)も積極的に活用し、オープンデータポリシーに基づいた“ビッグデータ”の分析手法(長岡技術大学との共同研究)も取り入れることも、特色としています。
以上の秋田高専の新しい産学連携のしくみを“共同教育”と呼び、秋田を活性化するしくみづくり (図1)に邁進していきます。
図1 共同教育による地域連携の概念図。県内外の技術と人材のネットワークが構築されると、地域のみなさんに加え秋田高専OBの力によって、地域の“ひとづくり・しごとづくり”のしくみが、形成されます。
2.秋田高専の“共同教育”のねらいと効果
地域が連携した共同教育活動によって、“人ネットワーク”に地域と県外のニーズ・シーズが地域に集積されます。その方法は、従来からのコーディネーターによる企業訪問に加え、
(i) 県内外にて共同教育研究会を開催することで
“人ネットワーク”への参加企業、技術者を拡大
(ii) “ひとづくり・しごとづくり”の観点での、教育コーディネーターによる
県内外のニーズ・シーズを収集活動
(iii) ICTを駆使したWeb上からのニーズ・シーズの電子収集
となります。あつまったビッグデータを分析することで、“人ネットワーク”においてその一部をオープンデータとして公開することで、皆さんに活用していただきます。これによって、
① 秋田高専OBをはじめとした県外技術者が地域にUターンする契機の促進
② 県外技術者による秋田高専学生や地域の若手技術者への教育活動の促進
が期待できます。これにより、秋田高専を介して県内企業と県外技術者との交流が促進され、共同教育を契機に
③ Uターンする技術者の出現
④ より質保証された人材を地域に輩出
という波及効果が生まれます。これは、地域の教育力と産業力が一体化することではじめて達成されるシナリオです。地域に不足する人材と技術の資産を本事業によって補てんするという、地方創生のモデルを構築します。
図2 共同教育による、県外から県内への技術・ひと・情報の流れの模式図。共同教育によって形成される“人ネットワーク”は、秋田へのさまざまな情報と人の持続的な流れを創出します。
3.県内外のみなさんにご参加いただくイベント・活動
“人ネットワーク”にビッグデータを集約するためにも、共同教育研究会を4回/年、秋田と東京で交互開催しています。県内外の産学官からの参加に加え、今後は、地域のみなさんからの参加に拡大して、地域活性化策についてディスカッションをしていきます。“人ネットワーク”のメンバーが中心となって、
Ⅰ 共同教育講演会 秋田高専の在学生および地域の若手技術者に対して、企業技術者ならでの、キャリア、人間力、分野横断解決能力等を、惜しみなく、伝承していただきます。学生の実情など教育現場の課題を、企業からの視点を導入することでの着地点の探索と、その教育効果を促進し、地域の若手技術者もが活用できる、教育教材の製作をおこないます。教材は、Web上でオープンデータとして公開します。
Ⅱ 研修会・ICT活用研修会 県内の若手技術者や学生を対象とします。地域に不足する専門/基盤技術に対して、県外技術者によって地域に還元するための技術研修会を企画しています。これは、県内外の技術協力や共同研究・開発の契機、または、地域への人や技術の移転の契機となるような接続を視野としています。
Ⅲ 学生参加型共同研究 秋田高専研究室の学生、専攻科生の研究テーマを、企業の基礎研究、次世代のイノベーションに接続するためのテーマとして、実践します。秋田高専や公設試の研究設備を活用しながら、地域に貢献できる技術者の育成に、県内企業のご協力で実現します。地域が一体となって共同教育された学生や地域の若手技術者が、将来、地域のコンソーシアムの中核となり地域を活性化することを視野とします。まずは、秋田高専が所有する研究者のシーズ、装置・機器のシーズを本HPから検索するところからご協力ください。
4.公開中のオープンデータ
これまでの活動によって、オープンとなっているデータの一覧です。
研究会(期日 行事名 会場) |
講演者 「演題」 |
講演資料 |
講演VTR |
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平成27年1月17日(土) ・秋田高専 ・会場:ベルサール八重洲 |
秋田県産業労働部雇用労働政策課 就職支援班 主幹(兼)班長 鈴木久 氏 「Aターン就職の現状と 主な支援策について」 |
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| インスペック株式会社 代表取締役社長 菅原雅史 氏 「変化はチャンス! 秋田の若者への期待」 |
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| 株式会社白崎製作所 代表取締役 白崎将 氏 「秋田高専生およびOBの皆様への期待」 |
非公開 | 非公開 | |
| 株式会社チバ・テクノ 品質管理部品質管理課 菅原慶真 氏 (物質工学科11期生) 「実際にAターンしてみて」 |
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| 平成26年12月6日(土)
・秋田高専 |
秋田県産業労働部地域産業振興課 |
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| 株式会社寒風 常務取締役 鈴木博 氏 (土木工学科6期生) 「石文化とふるさとでの地域貢献」 |
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| 岩手ネットワークシステム 事務局長 岩手大学工学部教授 小川智 氏 「産学官民連携による 地域活性化の取り組み ~岩手ネットワークシステムの 活動紹介~」 |
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長岡技術科学大学 |
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| 秋田高専地域共同テクノセンター 副センター長 宮脇和人 (機械工学科 教授) 「秋田高専における医工連携の取り組み」 |
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・平成26年11月15日(土) ・秋田高専 ・会場:日本教育会館 |
秋田高専地域共同テクノセンター 副センター長 丸山耕一 (物質工学科 准教授) 「2年目に突入した共同教育事業」 |
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| 秋田高専同窓会 名誉会長 三浦正悦 氏 (電気工学科1期生) 「卒業後、秋田を離れて秋田を思うこと」 |
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| 畠中環境カウンセラー事務所 代表 畠中豊 氏 (機械工学科4期生) 「全国高専OB会の活動と秋田への想い」 |
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| 株式会社高瀬電設 代表取締役社長 上野定之 氏 「高瀬電設の取り組み」 |
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秋田県企画振興部学術国際局学術振興課 |
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パネルディスカッション |
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・平成26年6月13日(金) ・秋田高専 ・会場:カレッジプラザ |
秋田高専地域共同テクノセンター 副センター長 丸山耕一 (物質工学科 准教授) 「秋田高専共同教育事業成果と今後の計画」 |
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| 秋田県産業労働部 雇用政策課 就業支援班 副主幹 佐藤昌人 氏 「Aターン就職の現状と 支援施策について」 |
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| 株式会社 宮盛 渋谷卓広 氏 (物質工学科6期生) 「秋田にAターンをして」 |
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| 株式会社チバテクノ湯沢工場 取締役工場長 阿部英夫 氏 「Aターン採用の受け入れ態勢について」 |
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・平成25年1月25日(土) ・秋田高専 ・会場:ベルサール八重洲 |
秋田高専地域共同テクノセンター |
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| 秋田県産業労働部 雇用労働政策課 課長 保坂伸 氏 「秋田県内の就職事情について 」 |
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| 秋田高専地域共同テクノセンター 副センター長 丸山耕一 (物質工学科 准教授) 「秋田高専がめざす地域連携」 |
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| 秋田県企画振興部 学術国際局学術振興課 科学振興・産学官連携班 主幹(兼)班長 鈴木英一 氏 (電気工学科14期生) 「秋田県における 地域イノベーションの推進について 」 |
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| 講演会 | 講演者 「演題」 | 講演資料 | 講演VTR |
| ・平成27年6月3日(水) ・秋田高専 第8回共同教育講演会 平成27年度 最先端技術講演会 ・会場:秋田高専内 |
東京農工大学大学院工学府産業技術専攻 教授 北原義典 氏 「人間特性に基づくシステム設計」 |
VTR編集中 | |
| ・平成27年5月27日(水) ・秋田高専 第7回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
有限会社ベスト青梅 製造部ハウジンググループ 設計担当 佐藤真澄 氏(機械工学科OG) 「商品開発のやりがいと 女性技術者に求められていること」 |
非公開 | |
| ・平成26年2月4日(水) ・秋田高専 第6回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
日本ユーティリティサブウェイ株式会社 開発部長 小野崎守 氏 (土木工学科8期生) 「あなたは、 いつも正しい判断をしていますか?」 |
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| ・平成26年12月19日(金) ・秋田高専 第5回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
長岡技術科学大学 准教授 磯部浩已 氏 「高専OBの大学教員から見た 現役高校生へのアドバイス」 |
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| ・平成26年10月1日(水) ・秋田高専 第4回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
ニューロング技研株式会社 設計課係長 安部厚志 氏 (機械工学科24期生) 「エアシャフトの設計・製造」 |
非公開 | 非公開 |
| ・平成26年8月1日(金) ・秋田高専 第3回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
株式会社牧野フライス製作所 加工技術本部開発グループ 難削材加工チーム 武石啓 氏 (機械工学科40期生) 「業界最先端をゆくマシニングセンタと 航空機構造部品加工技術」 |
非公開 | 非公開 |
| ・平成25年12月5日(木) ・秋田高専 第2回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
株式会社MECARO 村上信博 氏 (機械科16期生) 「スパイラルマグナス風車の開発と 事業化について」 |
非公開 | 非公開 |
| ・平成25年10月2日(水) ・秋田高専 第1回共同教育講演会 ・会場:秋田高専内 |
畠中環境カウンセラー事務所 代表 畠中豊 氏 (電気工学科4期生) 「仕事を選ぶか、会社を選ぶか ~進路を選ぶにあたって」 |
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| 研修会 | 講演者 「演題」 | 講演資料 | VTR |
| ・平成27年3月17日(火) ・秋田高専 第3回ICT活用研修会 ・会場:カレッジプラザ |
創成国際特許事務所 所長 佐藤辰彦 氏 「高専OBの知財成功事例」 |
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| 創成国際特許事務所 副所長 加賀谷剛 氏 「特許・知財戦略の基礎」 |
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| 創成国際特許事務所 副所長 加賀谷剛 氏 「特許・知財戦略の応用」 |
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・平成26年12月11日
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秋田県産業技術センター 上席研究員 新宅 一彦 氏 「薄膜作製の基礎と応用」 |
非公開 | 非公開 |
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株式会社アルバック |
非公開 | 非公開 | |
| ・平成26年5月22日(木) ・秋田高専 第2回ICT活用研修会 ・会場:秋田高専内 |
長岡技術科学大学工学部経営情報系 教授 湯川高志 氏 「情報検索とテキストマイニング」 |
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| ・平成25年3月25日(火) ・秋田高専 第1回ICT活用研修会 ・会場:秋田高専内 |
茨城大学工学部 教授 星野 修 氏 (工業化学科8期生) 「計算論的脳科学研究」 |
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| その他の行事 | 講演者 「演題」 | 講演資料 | VTR |
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・平成26年8月21日(木) |
パネル展示 |
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| ・平成26年8月8日(金) ・高専・長岡技科大(機械系) 技学セミナー ・会場: 長岡技術科学大学 マルチメディアシステム センター |
日本機械学会北陸信越支部 特別講演会 秋田高専地域共同テクノセンター |
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| ・平成26年5月22日(木) ・平成26年度共同教育説明会 (外部機関向け) ・会場:秋田高専内 |
秋田高専地域共同テクノセンター |
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| ・平成26年4月24日(木) ・説明会および報告会 ・会場:秋田高専内 |
秋田高専地域共同テクノセンター 地域共同テクノセンター コーディネータ |
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| ・平成25年11月26日(水) ・あきた産学官連携フォーラム 2013 ・会場:秋田市民交流プラザ 「アルヴェ」 |
パネル展示 |
〇ショートスピーチ一覧(あいうえお順)
〇 Aターン採用に積極的な企業一覧(あいうえお順)
5.教育コーディネーターからのおねがい
共同教育事業も3年目を迎え、着実に前進しております。
これもひとえに、皆さま方のご協力とご指導の賜物と深く感謝申し上げます。
平成26年度は、イベントとして、共同教育研究会4回、共同教育講演会4回、共同教育研修会2回を開催いたしました。これにより、人ネットワークの構築や秋田高専学生・地域の若手技術者のスキルアップ等が促進されました。共同研究1件も、具体化しつつあります。
コーディネーター活動においては、県内企業さまへの訪問により、約60社中7割を超える企業さまが、Aターン採用を推進したいことが判明いたしました。また、訪問に加え、ICT(情報通信技術)を活用し、共同教育事業ホームページに「ニーズ・シーズ調査フォーム」を掲載させていただき、県内企業の皆さまや高専卒業生および県内外の技術者さまの情報を、適時収集できるように電子収集ツールを設けさせていただきました。その結果、企業さま24社、卒業生29名の基本情報を得ることができました。基本情報をお送りいただいた皆さまには、心から感謝申し上げます。
しかしながら、情報量といたしましてはまだまだ微少であり、ご高覧の皆さまには、ニーズ・シーズ調査フォームへの記入に何とぞご協力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
また、今年度4月から、より多くの皆さまに共同教育事業を知っていただき、更に裾野を広げる目的で、県内企業の皆さまや購読を希望された方々にメールマガジンを発行しております。メルマガVo.1の発信件数は、メールにて426件、ファックスにて289件でありました。今後も、さまざまな手法を用い、共同教育事業に拍車をかける所存でおります。
企業経営に必要なもの、それは経営者の資質は勿論、ヒト・モノ・カネ、それと情報や技術です。私たちは、モノとカネは提供できません。しかしながら、企業の皆さまと共同教育を一緒に進められれば、人ネットワークと情報を駆使して、質保証された人材や的確な情報および技術を企業さまに提供できます。
ご面談によるヒアリングやICT活用によるニーズ・シーズ調査やAターン情報から得たデータは、マイニング手法を用いて分析し、問題点や着地点の洗い出しを行い、皆さまのアイデアも結集して、ご要望ごとに的確に解決策をご提案して行きたいと思っております。
ご周知の通り、秋田県の人口は25年後70万人、100年後は0人になると言われております。
安倍首相も佐竹知事も、今年は“地方創生元年”と位置付け、地元の雇用創出と若者の地元定着に向けて動き出しました。私たちは、私たちの手で秋田県の滅亡を阻止しなくてはなりません。
秋田高専は先駆けとして、産学官が一体となった共同教育事業を通じて、秋田県の若手人口の減少、これによる産業衰退構造に“人づくり”の観点から産業と教育を融合した科学技術システムの共創を目指しております。『ローマは一日にして成らず』です。短期的にも、長期的にも、地域の皆さま、また、秋田高専卒業生の皆さまのご協力が是非とも継続的に必要です。
申し遅れましたが、私は、本年4月から教育コーディネーターを拝命いたしました福田公紀と申します。甚だ微力ではございますが、一意専心、共同教育事業の発展に全力を尽くす所存でございます。
皆さまには、より一層のご協力とご指導を賜りますよう、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。