ミニマリストプログラムにおける移動の局所性
近年の生成文法理論は, 言語器官の諸特性を解明するための理論的指針として, ミニマリストプログラム(極小主義)の枠組みのもとで言語理論の研究が進められている。しかしながら, このような理論的進展とは対照的に現象は知られていながらも, 依然として理論的説明が与えられていないものも存在している。
(1) a. * The dogi is believed [CP ti [TP ti is hungry].
b. The dogi is believed [TP ti to be hungry].
(1b)の例がA-位置からA-位置への移動をしているのに対し, (1a)の場合の移動はA- A’-A の位置へそれぞれ移動している。したがって, (1a)の例が従来のImproper Movementを引き起こしていることになり非文と判断される。このような現象は, 定形節内からの移動(1a)と非定形節からの移動(1b)の非対称性という観点から考えると, 次のような(2)の例にもあるように一般的に見られる。
(2) a. * Whati did you wonder how they ate ti ?
b. ? Whati did you wonder how to eat ti ?
この研究の目的は, 「定形節(finite clause)から外へA-移動をすることができないのに対し、非定形節から外へのA-移動ができるのはなぜか」という問いに対して, 移動の局所性とその移動を引き起こしている素性の正体を明らかにすることである。
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