地域の皆様へ
1.「地域教育プログラム」の概要
秋田高専では、地域雇用を促進するために、学生が地域を理解し、地域の課題を発見し解決しようと”きづく”ための教育プログラムを平成28年度より新規に導入しました。県内企業の経営者や技術者、農業経営者等や、秋田県庁および関連機関の産業振興や雇用促進を担当する行政官等を講師にお迎えした講演会を、本科2年生の後期から卒業(専攻科修了)まで半期ごとに継続的に実施します。また、本科4年生からは、地域と密着した、校外実習(インターンシップ)、卒業研究、職業訓練(実務訓練)等の、秋田高専産学協力会およびその他の県内企業のご協力によるグローバリゼーションと地域志向性を兼ね備えた学生を地域に定着させるための教育プログラムを履修させます。この教育プログラムを地域に広く知っていただき、これにより、地域の課題解決に即戦力となる学生を技術者として地域に輩出するという計画です。
図1 秋田高専の地域教育プログラムの概要。平成28年度より本科4年生の履修が開始されました。
※現状(平成27年6月時点)では、学生の就職に関する意識・動向は残念ながら県内に向いているとは必ずしもいえません。就職先の希望が県内外のどちらでもよいと考えている学生が、納得して県内に定着できるような教育プログラムを構築していきます。
2.地方創生担当教員
秋田高専・地域教育プログラムでは、4学科(機械工学科・電気情報工学科・物質工学科・環境都市工学科)の教員から、地方創生担当教員を選出して、地方創生・地域雇用の拡大に取り組みます。具体的には、これらの教員が中心となり、地域の企業との共同研究テーマを発掘し、これに研究室学生を絡めて、企業技術者とともに学生を共同教育していきます。この学生が共同研究先の企業に就職することを目標とします。
表1 地方創生担当教員とその専門分野・テーマ
| 所属 | 役職 | 研究者名 | 博士 | 専門分野・取り組みたいテーマ等 |
| 機械系 | 教授 | 宮脇和人 | 工学 | 専門分野:福祉工学、人間動作解析を利用した福祉介護機器の開発 |
| 機械系 | 教授 | 池田洋 | 工学 | 電界を援用した次世代高効率研磨技術、及び生産設備の自動化省力化技術開発に取り組んでいます。 |
| 電気・電子・情報系 | 教授 | 駒木根隆士 | 工学 | 通信伝送工学のうち、信号・雑音解析を主たるテーマとし、現在、電磁波散乱による物性分析手法を開発 |
| 電気・電子・情報系 | 准教授 | 田中将樹 | 工学 | 専門は電子デバイス応用で、液晶を用いたミリ波デバイスの研究をテーマとしています。 |
| 物質・生物系 | 教授 | 上松仁 | 工学 | 微生物を用いた物質生産、天然有機化合物の分析 |
| 物質・生物系 | 教授 | 丸山耕一 | 工学 | 専門は材料工学、ナノマテリアルの機能制御による素子・デバイス・情報処理装置等の原理の提案 |
| 物質・生物系 | 准教授 | 野中利瀬弘 | 工学 | 資源リサイクル、分析化学(固体、液体)、無機合成化学 |
| 土木・建築系 | 助教 | 鎌田光明 | 工学 | 専門:空間計画、景観計画、建築・都市デザイン、テーマ:秋田市の都市域の変遷に関する研究、秋田市の地域のイメージ構造に関する研究、竿燈行事におけるプレパレーション空間の研究、秋田市中心市街地における都市型文化複合施設のデザイン提案 |
3.「地域教育プログラム」の定着後のイメージ
秋田高専・地域教育プログラムを履修した学生が、納得して地域に定着するという概念をイメージにしました。5年間(あるいは7年間)の段階的な教育を経て地域に定着した学生が、地域の財と技術のイノベーションを創出するよう、秋田高専と地域の企業等が一体となって、この教育プログラムに取り組みます。
4. 「地域教育プログラム」の詳細
(学生に配布する内容をそのまま掲載しております。)
「地域教育プログラム」は、本校が、文部科学省、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)の参加大学となることを契機に、平成28年度より導入された教育プログラムである。ここでは、本教育プログラムを履修する学生が必要とする学習に関する留意事項を示す。
(1)本校の地域教育の趣旨と教育プログラムの概要
本校では、本校全学科を対象に、地域理解、地域課題発見/解決、地域貢献の内容を趣旨とした、講演会や授業を導入している。地域に定着する若者人口を増大させることが目的である。この中で、本教育プログラムは、地域およびその産業の状況を理解し、地域の特色をいかした技術開発等、地域貢献を行うことのできる人材の育成を、秋田県庁や県内企業との共同教育によって行うものである。本教育プログラムを履修して、基準を満たした学生は、「地域教育プログラム認定」される。表1に、本校の地域教育全体の概要と、その中での本プログラムの位置づけを示す。
※共同教育とは、高専機構が推進する学校が地域と一体となり、本校教員と企業等の実務家教員とが共同して学生を教育することをいう。秋田高専には、OB・OGを中心とした地域の皆様と協力して構築した企業経営者や技術者等によるヒューマンネットワークがある。
(2)科目の構成と単位/修了認定について
図1に示したように、本教育プログラムは主に、地域教育のための地域理解講演会、地域理解授業(地域史、地域産業Ⅰ、地域産業Ⅱ、地域計画)地域課題発見型基礎研究、地域密着型校外実習、地域課題解決型卒業研究(・特別研究)によって構成される。これ以外にも、必要に応じて、地域課題解決型技術研修会、職業訓練型特別研究を履修することができる。これらの科目の名称(COC+としての呼称)および概要、単位/修了認定の方法を示す。
表2 秋田高専の地域教育プログラムの科目の年次概要

地域理解講演会(COC+講演会) 本科2年生後期から本科卒業まで(あるいは専攻科修了まで)の間、半期に2時間(90分)の講演会を履修する。この科目は、本教育プログラムの履修学生に限らず、学年ごとに全学生対象の講演会として開講する。講演者は、県内企業の経営者、技術者、秋田県庁職員等の実務家教員である。履修学生には受講した分を修了認定する。
地域理解授業(COC+授業) 授業は各々、半期30時間の授業である。授業内容は、授業シラバスを参照のこと。本科4年前期(地域史)、4年後期(地域産業Ⅰ)、5年前期(地域産業Ⅱ)、地域計画(地域計画)を計画的に履修することで、地域理解の基盤が築かれる。講演者は、県内企業の経営者、技術者、秋田県庁職員等の実務家教員である。履修学生の必修科目として単位認定する。
地域課題発見型基礎研究(COC+基礎研究) 本科4年生の学生が、地方創生担当教員から地域課題を知り、これに関連したテーマに関連した基礎研究を実施し、地域課題解決型卒業研究へと接続する。履修学生の必修科目として単位認定する。
地域密着型校外実習(COC+校外実習) 本科4年生の夏季休暇を中心とした県内の企業等における校外実習(インターンシップ)である。別記した県内企業等や、希望する県内企業等を実習先とする。履修学生の必修科目として単位認定する。
地域課題解決型卒業研究等(COC+卒業研究等) 各学科で選定された地方創生担当教員の研究室に原則所属し、県内企業の実務家教員等との共同教育など地域課題に関連したテーマによって、卒業研究(5年生)を履修する。同様に、特別研究(専攻科1年)、総まとめ科目(専攻科2年)を履修する。履修学生の必修科目として単位認定する。
※履修学生は、学科長が認めた場合、地方創生担当教員以外の研究室に所属することができる。
地域課題解決型技術研修会(COC+技術研究会) 県内企業がかかえる技術課題に関係する技術研修会に、本科4年以上の学生が参加することができる。履修学生には受講した分を修了認定する。
職業訓練型総まとめ科目(COC+職業訓練) 地域課題解決特別研究が発展した場合等の理由で、共同教育/共同研究を行っている企業等に長期滞在することで、特別研究課題に関係した職業訓練を実施する科目である。履修学生は、地域課題解決型総まとめ科目または職業訓練型総まとめ科目として単位認定される。
(3)本プログラムの履修学生とは
本科生は、3年次に、地域教育プログラムの履修申請をし、4年次より履修を開始する。ただし、履修申請できる学生は、原則、
認定条件(1):県内企業等への就職、県内大学等への進学等の意思を有すること。
が要件となる。この学生が、
認定条件(2):地域理解授業のすべての単位を取得し、
認定条件(3):地域密着型校外実習の単位を取得し、
認定条件(4):基礎研究や卒業研究(、専攻科生は特別研究)において、地方創生担当教員の研究室に所属し、地域課題解決型として単位を取得し、
認定条件(5):秋田県内(あるいは県内に本社・事業所等がある)企業等に雇用、あるいは進学の内定をうけた
場合に、「地域教育プログラム履修」を認定する。この認定は、学内外の学識委員によって構成される委員会の承認によるものである。
また、この認定には、
認定付与(6):地域理解講演会の受講認定
認定付与(7):地域課題解決型技術研修会に参加した場合の修了認定
認定付与(8):特別研究を職業訓練型特別研究として従事した場合の修了認定
を付与する。また、専攻科より入学した学生に対しては、認定条件の(1)、(3)、(5)を満たし、かつ、地域課題解決型特別研究の単位を取得した場合に、「地方創生教育プログラム履修」を認定する。なお、本科より専攻科に進学する学生の認定は、専攻科修了時とする。
ただし、以下のことに留意する必要がある。
※1 本科生は、4学年進級時以外には、地域教育プログラムの履修申告をすることはできない。また、本プログラムの履修申告と、物質工学科におけるコース選択(物質コース、生物コース)とは関係しない。
※2 本プログラムの履修を申告した学生は、履修の認定を目指すことが望ましいが、途中で、認定要件を満たせないなどの理由で、履修をとりやめることはできる。本プログラムの履修破棄のみを理由として、進級や卒業、修了が妨げられることはない。
※3 本プログラムを履修申告した学生は、地方創生担当教員の研究室に所属することが望ましいが、地方創生担当教員以外の研究室に所属する場合にも、別記する所定の基準を満たして卒業研究等に従事した場合には、履修を認定されることがある。
※4 本プログラムを履修しない学生でも、地域理解講演会は全学生必修であり、また、地域理解授業、地域課題発見型基礎研究、地域密着型校外実習、地域課題解決型卒業研究等、地域課題解決型技術研修会、職業訓練型総まとめ科目を履修、または参加することができる。
※5 本プログラムを履修しない学生が、地方創生担当教員の研究室に所属して、卒業研究等を履修することは妨げない。
(4)本プログラム科目の履修と認定の対応、重複履修について
地域教育プログラムを履修申告した学生は、表2に従って、認定条件関連科目と認定付与関連科目等の履修や単位取得することが認定に要される。また、「重複履修できない科目」を履修することはできない。一方、本プログラムを履修申告しない学生(未履修学生)でも、表2のとおり、地域教育プログラムの関連科目を履修することができる。この場合、これらの関連科目は表2にある「重複履修できない科目」との単位に互換性があるため、卒業・修了要件等への影響はない。
表3 地域教育プログラムの科目と既存科目との対応、履修学生と未履修学生の相違

※履修学生が地域教育プログラムの認定を受けなかった場合、科目(*)に読み替えて、卒業(修了)時に単位認定する。